Mag-log in数時間後。危うくうとうとと眠りかけていた俺は、マリーさんに起こされる。危ない、まだ寝たりしたら女性側に無意識に引っ張られてしまう。人前では気を抜いたらダメだ。更に無駄な注目を集めることになる。
「ようやく報酬とランクの計算が終わりましたよ。もう、カーズさん! 前代未聞過ぎて大変だったんですからね!」
「あ、ああ、申し訳ない」
目を擦りながら答える。確かに結構時間かかったみたいだ。そろそろ日も暮れてくる。
「いいえ、これまで未達成のままになっていて困っていたクエストもあったからこっちとしては大助かりだけどね、猫獣人の手も借りたいくらい突然忙しくなったわよ。みんな総出で手伝ってくれたからこれでも早く終わった方なんだから」
無自覚だったけど、訓練とはいえそこまでの数を狩っていたとは……。必死だったしな。
「で、カウンターで渡すけど、報酬はクエストと賊の懸賞金、素材の買取など全部で850万ギール。ワイバーンの素材は後日オークションだから、それはそのときね」
マリーさんに 付いて行き、カウンターで大量の金貨を受け取る。おおー、すごいな、2日でこんな額稼げるなんて。冒険者すげー! でも、ぶっちゃけ体が資本の命懸けの自営業って感じがするなあ。怪我したら終わりだ。でもそういう一攫千金のために命を燃やす生き方ってなんかいい。スポーツ選手だってそんなもんだ。とりあえず美味い物をたくさん食べよう!
「それとランクについては、もう異例中の異例、Bランクまで一気に昇格よ。それについてはこれからギルマスから話があるわ。エリックとユズリハも一緒にね」
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ということで今はギルマスの部屋のソファーに座っている。右にエリック、左に俺の頭を撫で続けるユズリハ。目の前にはギルマスとマリーさんだ。
「とりあえず、Bランクへの昇格おめでとう、カーズくん」
「はは……、ありがとうございます。でもいいんですか? 我ながら悪いような気がします」
「まあ異例中の異例だったのう。だが、GPも十分な程貯まっておったし、試験で実力も見た。ズルしてGPを稼ぐことなどできん。上げないわけにはいかんかったのだよ。ウチとしても実力者は大歓迎だし、めでたいことなのだよ」
「はあ、ありがとうございます?」
よく分からないが良いことなのだろう。とりあえず俺はたくさん報酬が貰えるならいい、美味しいものを食べられるし。
「で、じいさん。俺達までここに呼んだのはどういう理由だ?」
「そうね、試験監督しただけだし」
そうだな、何で二人も呼ばれてるんだ? そしてユズリハは俺をいい加減解放して欲しい。
「お前達、調度良くAランクの試験資格を持ったことになってのう。だがこれはクラーチ王国のギルドのような大きなギルドでしか受けられん。Sランク試験も同じようなものでな。3人も揃ったことだしクラーチの王都で試験を受けて来いと思ってな。どうだ、受けるか?」
あ、そう言えば王都に行く用事もあったな。この際今日の事件のことをギルマスに話すべきか? 恐らくステファンの人柄なら力になってくれるはずだ。それに2人が付いてくるならあの護衛達よりは頼りになる。どうしたもんかな……。いや、正直俺一人で手に負える案件ではない、協力者は多い方がいいだろうな。
「マジかよ、そいつはいいな! 三人で受かってやろうぜ!」
「そうね、せっかくだし。カーズと王都も楽しそう!」
「王都……。ギルマスにマリーさん、少々相談したいことがあります。それと二人にも出来れば協力して欲しい。更に絶対に内密にしてもらいたい」
「ほう、何やら大変そうな様子じゃな。お主ほどの者がそう言うとは」
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「それは……、そんな危険なことがあったんですね」
マリーさんが溜息を吐く。つい先程の事件だしな。俺はアーヤ姫救出の際の出来事と帰りの道中の護衛を引き受けていること。恐らく王国内で何かしらの事件が起きていることを話した。そして宰相が怪しいことに明らかにそれと繋がっている執事を捕らえていること、出発は1週間後ということも。
「うむ、だがカーズくんの判断は英断だ。王族が依頼など出せば大騒ぎになる。それに護衛のレベルも考えるとな。ではこれを今回の極秘クエストとしておこう。決して他言してはならん。エリック、ユズリハも護衛として一緒に同行すること、もし可能なら王国の闇を暴いて来い。だが決して無理はするな。自分達の命が優先だ。恐らくSランク以上に相当する危険な任務になるかもわからん。儂は先に公務中のアーヤ王女と面会をしておこう。それに王宮には知り合いも多いのでな、色々と手回しをしておこう。試験はそのついでに済ませて来い、よいな」
ガシッとエリックが拳を合わせる。
「よっしゃ、こいつは燃えるな! やってやろうじゃねーか! 三人でAランクになろうぜ!」
「遊びじゃないのよ、バカエリック。まあカーズと一緒だし私も楽しみ!」
浮かれているが、王族全体がヤバいんだ。一人じゃあ手が回らないかも知れない。巻き込んだことになるし礼は言っておこう。
「二人とも助かる、ありがとう」
「カーズくん、大変だろうが二人のことも守ってやってくれ」
「はい、俺の前で仲間は誰一人殺させやしない」
二人とも知り合ったばかりだが気のいい奴らだ。俺の都合で死なせたりなど出来ない。こればっかりは絶対だ。それにアーヤ姫、彼女のことはなぜか心に引っ掛かる。何故かはわからないが。
ということで、後日また話し合いとなった。後は宿泊する宿屋も紹介してもらった。ありがたい。
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そして今は冒険者のみんなに奢ることになってしまい、どんちゃん騒ぎの最中だ。楽しめるときに思い切り楽しむか。いいな、今を生きてるって感じがする。
俺は寝てしまうとまずいのでほとんど飲んでいない。それに恐らく全耐性が高くなっているためかまるで酔わない。ということで、声をかけてくる冒険者や他のギルド関係者などと挨拶やらしながらテーブルで適当に食べたりして寛いでいる。一日が濃過ぎたし、多少は疲れたのかもしれない。
そうだ、エリックの武器を壊してしまったんだった。クエストにも一緒に行くし、武具創造のスキルで創ってやるか。折角のスキルだ、使えるかも試したい。冒険者仲間と飲んでいるエリックに目をやる。
「おーい、エリック!」
「なんだ、カーズ! どうした?」
のしのしと近づいて来るエリック。
「武器壊しちゃっただろ、不便だと思ってさ」
「ああー、だが仕方ないしな。また店でも探してみるぜ」
「そのことなんだが、俺は武具創造というスキルを持ってる。まだ試したことはないが、Aランクまでの武器なら創れるはずなんだ」
「マジかよ、そいつはスゲェ! じゃあ頼むぜ、お前が創るんだ、とんでもないものに決まってる」
「どうかな、やっぱり大剣がいいのか?」
うーん、まあそうだと頷くエリック。俺は自分が大剣を使わない理由を知ってもらおうと思った。
「正直言って大剣は使い勝手が悪いぞ。その大きさ故に叩き切るか薙ぎ払うしかできない。重い上に体力も使う。外したときの隙も大きいしな」
「……確かにそうだな、なら軽くて丈夫なやつを頼めるか? それならその弱点はなくなるだろ? それに愛着もあるしな」
愛着か、自分の愛剣だったんだろうし、それはそうだろうな。俺なんかよりずっと長くこの稼業をやっているんだ、俺が決めていいことじゃないな。
「なるほどな。わかった。出来る限りやってみよう。もっと他にリクエストはあるか?」
「軽くて丈夫、だが斬撃が軽いと困る。持つには軽いが、与える衝撃は強い方がいい。あのぶった斬る感触がいいんだ。あとはお前のイメージに任せるさ」
「わかった、初めてだがやってみよう」
両手に魔力を込めると、その空間に黒い
<スキル武具創造が発動します。創造する武具のイメージを固めたらそれを更に形にするイメージで空間から取り出して下さい>
なるほど、スキルが詳しく教えてくれるとはありがたい。ならイメージは大剣。軽くて壊れない。更に切りつけたときに衝撃が追加で加わるような、見た目のイメージはそうだな、細かいことはわからないが北欧神話の魔剣バルムンクだ、グラムとかノートゥングとも言うが響き的にバルムンクがいいな。今の俺にとって出来る『最強』のイメージを魔力と供に注ぎ込む!
<イメージ構築完了・魔剣バルムンク、創造開始します。魔力を硬質化するイメージで集中させながら空間から抜き取って下さい>
よし、了解だ。俺の両手が突っ込まれている黒い空間から禍々しい魔剣が出現し始める。そのイメージに魔力を固定しながら剣を引き抜く。元の大剣とほぼ同じくらいの大きさだが、刀身は黒くギラついて輝いている。剣自体に込めた魔力で、自動的に無属性の衝撃追加のおまけつきだ。
意外にも創れるものだな、片手でも軽々と振れる。今の俺に創れる『最強』のイメージが収束された、Aランク相当の大剣だ。勝手なイメージだから本当の神話の剣とは見た目が異なるだろうが、それはそれ。俺にとってのイメージだし、地球じゃないから誰も知らないしな。
だがこれはかなりの魔力を使うな。恐らくイメージに合わせてMPの消費量が変わるのかもしれない。ついでに専用の鞘も高硬度で創造した。ふぅ、と息を吐きながら鞘に納めたその剣を片手で持ち上げながらエリックに向ける。
「受け取ってくれエリック。今日の礼だ。そいつは魔剣バルムンク、神話の英雄が使っていたとされる伝説の魔剣だ」
「お、おぉ……、何だこれ?! 途轍もない魔力を感じる。しかもまるで重さを感じねえ。どんな素材なんだよ?」
受け取ったエリックが騒ぐ。わかるよ、俺がアリアのお手製をもらった時も驚いたもんな。
「俺の魔力を高濃度で圧縮して硬質化してある。オリハルコンにはさすがに負けるが、そこら辺のものなら切れないものはないと思うぞ」
「マジかよ、とんでもねえな! ありがとうよ、相棒! ちょっくら試し切りに行ってくるぜ、またあとでな!」
サッサと行ってしまった、そしていつの間にか相棒にされてしまった。喜んでくれたしいいか…って、また視線が集まってるな。そりゃあ空間からあんなデカい剣出せば目立つわ! 俺のバカ! あんなに物々しい感じになるスキルだったとは、こんな大勢の前でやるんじゃなかった。
「ははは、手品だよ、手品!」
誤魔化してみた。ゴン! 後ろからげんこつが飛んできた、痛い。やっぱユズリハか……。
「まーた何やってんのよ、カーズ?」
「いやー、エリックの武器壊しちゃっただろ。だからお詫びにと思ってさ」
「何ですってー! あいつばっかりズルい――!! 私にも杖作ってよ! あれに負けないくらいの!」
「いや、結構魔力使ったし、今日はもう無理かも、ははは……」
「じゃあこれでも飲みなさい!」
ぶちゅ――! 何だ? ユズリハにキスされてるのか? しかも何か水分を口の中に入れられた、苦しいので思わず飲んでしまった。少しだけ魔力が回復した気がする。
「ぷはっ、ちょ、ユズリハ! みんな見てるって!」
ぐいぐいと、ユズリハを押しのける。本当よく絡んで来るなあ。
「ふふーん、どう? マナポーションよ、魔力回復したでしょ? それにねー、アンタみたいなカワイイ顔してたら異性に見えないのー。こんなの同性と戯れてるようなもんよ!」
いや、同性でもキスはしないだろ? 男だったら俺吐くよ? それにそこまで言われると男としては少々悲しいなあ。見た目は仕方ないけどさ。しかしなぜそんなもんを今飲んでるんだよ?
「全然違うように思うんだけど……」
確かに回復したが、ほんの少しだ。全快には程遠い、全然足りない。さっきのでMPごっそり持って行かれた。多分まだコントロールが甘いのだろう。初めてのスキルだとはいえ、思ったより加減が難しい。
「うーん、あれくらいじゃあ全然足りないかも。意外に結構MP消費したんだよ」
「えー、じゃあ私のは? ねえねえ、ダメなの!?」
ダメだ完全に酔ってるじゃないか、胸元にギュムーと抱きすくめられて苦しい。もう何回目だよ。まあ、おっぱいはありがとう。苦しい、でもありがとう、やっぱり苦しい。
「また創ってあげるから、どうせ一緒にクエストに行くんだし。それに杖は脆いから囲まれたらアウトだし、そうなっても戦えるような武器にしてあげるからさ」
「うん、わかった、絶対よ――!!」
また来た、ヤバい、もう勘弁してくれ。酒乱は苦手なんだよ!
「おう、カーズ戻ったぜ!」
エリックか助かった。ていうかもう戻って来たのかよ。
「丁度良かった。とりあえずユズリハを何とかしてくれ!」
そんなのどうでもいいって感じでエリックが詰め寄って来る。
「何だよこの剣の性能は!!! えげつねえぞ! どうなってんだよ!?」
「え、あ? そ、そうか?」
こっちも興奮してるなー、しかもこいつ酔ったまま街の外行ったのかよ。
「大木がスパスパ切れちまう。地面に打ち下ろしたら、前方に爆発したみたいな衝撃がぶっ飛んで地面が抉れるし、何だよこの効果は!?」
あ、ダメだ。二人してグイグイくる。勘弁してくれ、周りもげらげら笑ってるし、誰も止めてくれない。そのまましばらくみんなのおもちゃにされながら、深く溜息を吐く。
とりあえず落ち着いたら、宿屋に行こう。戦闘よりよっぽど疲れたな。いい加減にアリアを起こさないとだし。あーあ、早く休みたい。宿屋に着くのはもう少し経ってからになりそうだ。
ヨルムに乗って南門の外まで飛ぶ。「来い! 神剣ニルヴァーナ!」「お願い、ルティ!」「あいよー」「星芒より来たれ! クローチェ・オブ・リーブラ!」 各々が自分の武器を構える。南門前に着地させたヨルムから見る、南門に迫り来るベヒーモスの大軍。東門の方にも反応がある。黒や青や赤など、様々な色をした数十m以上はある巨体に、二本の巨大な角、四足歩行の全身を分厚い獣皮が鎧の様に覆われている。こいつは確かに並の武器じゃ傷一つ付けられないだろうな。 だが俺達には神格に神気、神器やそれに匹敵する武器がある。怖れることはない。そして神気を放った状態でヨルムと両親の再召喚を行った。陽子を破壊できる俺達にとっては紙切れも同然だ。「先ずは挨拶代わりだ。いけ、ヨルム!」「任せよ主! 受けろ、我が輝くブレスを!」 ドゴアアアアアアアアアアアアッ!!! 神気を纏った極光の竜の息吹が、放射線状に放たれ大地を敵ごと抉る! グギャアアアアアアア!!! 凄まじい威力のブレスに、迫り来るベヒーモス共が粉砕されていく。だがまだまだだ、俺の千里眼と鷹の目には、南東にある大迷宮から次々に敵が飛び出して来ているのが視える。どんだけいるんだ? 数万は下らないだろうな。だが俺達だけで掃討する!「アヤ、母さん! 南門の防衛と援護は任せる!」「任せて!」「はーい、漸く母さんの出番ねー」 ババッ! 飛び降りる二人。「イヴァ、親父! 東門にも反応がある! 二人はそっちを頼む!」「よっしゃー、行くぜ猫嬢ちゃん!」「任せるのさー!」 ダンッ!!「全員逆探知を発動させて自分達にターゲットを絞らせろ! エリック、ユズリハ、ディードは目の前の敵の掃除を任せる!」「はい! カーズ様!」「オッケー!」「任せときなー!」 ドンッ! 同時に飛び出す三人。「アリア、視えてるんだろ? 操られてる神獣達が」「ええ、神龍ケツアルコアトルにグリフォン、フェンリルにフェニックス。どうやら大将首は神鳥フェニックスに乗っていますね」「なるほど、ダカルーのばーちゃんの時と同じだな。アリア、グリフォンはお前がどうにかしろよ。ケツアルコアトルは、竜王兄妹、お前達に任せる! 行け!」「ハイハーイ、気が乘らないけど行って来ま―す」
舞台に乗ってストレッチをしていると、逆方向からハゲが上がって来た。「「「ハーゲ!!! ハーゲ!!!」」」 うーん、凄い声援だが地味に悪意を感じるな。まあ、あんなのでも国民には愛されてるのかな? とでも思っておくか。俺が毛根破壊したんだが、ちょっと不憫だ。「やはり貴様とは殺り合う運命のようだな。神殺しのカーズ!」 また変なことを言い始めたなあ。厨二か? やだやだ。それにダメージ肩代わり魔道具あるから死なねーよ。「いやいや、偶々くじ引きでそうなっただけだろ? 俺もあの竜騎士と闘いたかったんだけどなあー」「フッ、そうか。俺と闘うのが怖かったということだな」「いや、あいつの方が強いだろ? 意味の分からん敵意をぶつけてくるから、ぶっちゃけお前は面倒くせーだけだ」「おのれ…、貴様……!」「聞いたけどさー、お前自分がSランクの最速保持者だったんだろ? 所詮記録なんていつか塗り替えられるもんだ。今の最速はウチのニャンコだ。そんなしょうもない程度のことでイラついてたらストレスでハゲるぞ? あ、悪い、もうハゲてるんだったな。ごめんなー、ストレスかけて。俺に勝ったら治療してやるよ」 まあこいつの態度次第だけどね。「くっ……、貴様にはSランクの誇りは、プライドはないのか!?」 何だそれ? プライドチキンにプライドポテトか?「ねーな。そんなのしょうもないもんがあったら20ギールで売ってやるよ。後、ウチのPTが美人揃いだとか、邪神を斃したとか、そう言うのが気に入らないんだってな? 只のやっかみだろ。お前はガキか? そんなことにエネルギー割くくらいなら鍛錬でもしろよ、くっだらねーな」「貴様ああー…! 言わせておけば……!」 語彙が少ないなあ。そんなんで口で俺に勝てるとか思わないことだな。これでも元教師、アホなモンペのクレームとかで慣れっこなんだよ。いくらでも口が回るからな。『さて遂に最終戦ですが、ここまで我がリチェスター勢は連戦連勝。そしてリチェスター及び、現在世界中のSランク最強のカーズさんが相手。ハ、ゲフンゲフン、ガノン選手には打つ手がありますかね? アリアさん』『うーん、いや無理ゲーでしょー。レベルも3倍以上の開きがありますし、カーズはああいうヘイトばら撒く小物が大っ嫌いですからね。まあでも手加減しながら色々と技
魔導具を起動させて、エリックが舞台へと上がる。そして逆方向からは竜騎士のカセルが舞台へ跳び上がって来る。「「「カセル!!! カセル!!!」」」 凄い声援だな。先程のソフィアの時も凄かったが、この人は相当の人気だ。青銀と群青色の色彩の全身鎧だが、昨日の暗黒騎士のサウロンよりは軽量だ。頭にも竜の頭を模した様なヘルム。FF4の竜騎士みたいな装備だ。そして武器はやはり槍か。穂先が結構長めのスピアだな。刺突にも斬撃にも対応可能な2m程の長さの槍。鑑定、ドラグーン・スピアね……。やはりSランクか。何処で手に入れたんだろうな? 後で聞こう。 スピアとは英語で『槍』を意味する言葉の一つ。槍全般を指す場合は『スピア(spear)』が一般的だが、馬上槍は『ランス(lance)』、長槍は『パイク(pike)』など呼び分けはされている。最も、スピアタイプの槍をランスと呼んでいたりもして、呼称の使い分けは厳密ではない。 スピアとランスはよく混同されるが、決定的な違いがある。スピアは片手もしくは両手で扱うことができる歩兵槍のことだ。振り回し、先端に付いた刃で刺突・斬撃が可能。投擲用のスピアは『ジャベリン』とも呼ばれる。 対してランスは、中世から近代まで主にヨーロッパの騎兵に用いられた槍の一種。語源はラテン語で槍を意味する『ランケア(lancea)』、日本語では、『騎槍』とも訳される。単純に馬に乗った状態での専用武器のため、馬に乗ってない場合は全く使えないシロモノだ。 戦場だけでなく馬上槍試合でも用いられたランスは、『兜・鎧・剣・メイス・盾』と並ぶ、騎士を象徴する装備の一つであり、ファンタジーRPGなどでは、細長い円錐の形に『ヴァンプレート』と呼ばれる大きな笠状の鍔がついたものがよく描かれているが、必ずしも全てのランスがその形状をしているわけではない。 ランスと他の槍との決定的な違いは、基本的に刃物がついておらず、棒の先が尖っているか、前述した円錐型をし、敵対者を突き刺して攻撃するのが最も効果的な武器である点だ(この先端の形状は国によって異なる)。また、長さも特徴の一つで 一般的な片手武器の中でずば抜けて長く、4~5メートルを超えるものもあり(一般的なランスは扱い易くするため2m前後だが、それでも片手武器では一番長い)、接近戦闘用の
Sランク同士の興行試合の日になった。時間的には昨日と同じくらい。みんなリラックスしながら俺の部屋でスタンバっている。後は城の使いの人が迎えに来るのを待つだけだ。 昨夜の夜這い連中はアヤが目を覚ました時に、ベッドの左半分を占拠する様に鼾をかいてだらしなく寝ていた。そして事情聴取からの当然怒られていた。だからやめろって言ったのになあ。「「「「次はうまくやるし/やります/やるわー/やるのさ……」」」」 まあどう見ても反省してないけどね、こいつら……。全く、なんでこんなことをするんだか……? しかもまたやる気だし…もう知らね。「今日もアリアの姿がないということは……、やっぱり実況やるんだろうな」「昨日楽しそうだったもんねー」 アヤが答える。だよなー、絶対面白半分でやるだろうな。「盛り上がってたし、いいんじゃないの?」「今更なあー、あの人に何か言っても無駄だろうぜ」 エリユズの言う通りだな。あのアホは面白いと思ったことに対しては全力で命をかけてでも取り組むやつだからなあ。取り敢えず俺は両親がゲストに呼ばれないことを祈ろう。念の為に後で念話も送っておくか。「今日は恐らく昨日以上にレベル差がある分、更に一方的になるだろう。相手の仕掛けて来るスキルやら魔法、魔力撃も全て俺らに傷をつけられない。だから取り敢えずは一通り相手の手の内を見てやろう。俺達が先に仕掛けたら、そこで試合終了だ。一応イベントだし、多少は盛り上げさせないとな」「面倒臭いけど、仕方ないわよねー」「ちんたらしてたら先にしばきそうだけどなー」 この二人の戦闘狂なら充分ありえそうだが、折角の貴重な対戦だ。一瞬で終わらせるのは勿体無い。「まあ、そうかも知れないけどなあ。一応相手の戦術やらを見てみようぜ。相手のが俺達よりも形式上は先輩なんだし。あ、そう言えば俺はあのハゲと対決させられるんだろうか? ぶっちゃけ嫌なんだけど」「昨日の対戦順とかも勝手に決められてたし、違う相手かも知れないよ?」 アヤが言う様に、確かにプログラムとかもなかったし、世界的なイベントの割には意外と杜撰だよな……。勝手に実況までやってたくらいだし。盛り上がれば何でもいいのかね? 文化が中世だしそこまでキッチリじゃないのかもな。「そうだな。まあ誰が相手でもいいか。あのハゲは豪
うーん、どうしてこうなった……? 二回目。 城下のお祭りから、まだ食い続けているアリアを放置して某人気走る娘の様に腹ポコ状態のイヴァとルティを回収して帰って来た迄はいい。そしてみんなで一旦風呂にしようということで大浴場に向かった。普通は男湯に入るよね? でも女性体状態でピンクの浴衣に髪の毛も飾られている状態で男湯の暖簾を潜ろうとしてた俺は、女性陣に全力で止められた。まあ、冷静に考えたらこの状態で入るのは問題あるよね。中で男性体に戻ればいいんだが、その前に絶対に全身を「なんだなんだ?」って感じで見られるだろうし……。 でもね、躊躇なく女湯の暖簾を潜れる程、俺は自分を捨ててないんだよ。女性陣に散々説教されて、仕方なく女性体のまま女湯に入り、体を洗って、髪の毛は何故かみんなが我先にと言わんばかりの勢いで洗ってくれた。いやあ、ありがたいけどツラいな……。「お前は毎回無駄に苦労するよな……」 というエリックからの同情と憐れみの視線はともかく、「女風呂に堂々と入れるとか最高っすね、兄貴は!」 と思春期丸出しの発言でチェトレに蹴られていたアジーンにまで、変な気の遣われ方をされるというツラさ。まあね、見た目の性別は変えられるよ。でもねー、中身? 精神は男なんだよ? ウチの女性陣が多分おかしいんだろうと思っていたんだが、いや寧ろ気を遣ってくれているのかも知れないと最近は思う様になってきた。自宅でも女性陣の方が堂々と「一緒にお風呂に入ろうよ」と言って俺を連れて行く。その後で「女性体になってね」って言う感じで。 実際女性体の方がリラックスできるってのはある。男性体を維持するための全身の魔力の緊張を解きほぐすには女性体の方がいいんだよな。それに男性体でも顔の見てくれがね……、てことで男性陣は余り一緒に風呂ってくれない。全くこの思春期童貞共め……! 女性陣の方が度胸があると言うか恥じらいがないと言うか、肝が据わっている感じだ。一応男なので極力見ない様にしているけど、向こうは堂々と見て来るし、モロに触って来る。もうね、距離感がわからんのだよ。イヴァとかルティは子供と風呂ってる様な感覚、アガシャもそんな感じだ。まあ大抵はアヤも一緒だしな。と言うかアヤがいないとさすがに気が引ける。 タチが悪いのがユズリハやチェトレ、アリアのアホとくっついて
うーん、どうしてこうなった……? 祭典、夕暮れのお祭りの街中をみんなと歩いている俺は浴衣を着ている。いや、浴衣が悪い訳じゃないんよ。なぜピンクの女性用の浴衣もろもろのお祭りセットを着せられているのかということだ。そして仕方ないので勿論、女性体になっている。さすがに男性体の状態では違う意味で着れない。このお祭り堪能セットを用意していたのはやっぱりアリアだが、持って来たのはアヤだ。しかもノリノリで。みんなの分も頼んでいたらしい。「折角だから一緒に可愛い恰好をして、日本の夏祭りとか縁日みたいに過ごしたいなー」 などと目を輝かせて言うから、断れなかった。うーん、困った。着付けも髪の毛の飾り付けも全部アヤとウチのメイド組がやってくれた。もうこれまたノリノリで……。でもね、女性体の時の体を見られるのは何故かすんげー恥ずかしいんだよ。あー、いやマジ勘弁して欲しいけど、アヤがこういうシチュエーションも楽しみたいらしいので、もう今更だなあと逆らわないことにした。段々受け入れていってる自分がいるのは確かだが、アガシャに見られるのだけは一番キツかった。いやマジで。 バトル組の男性陣、エリックにアジーンは男性用の紺色やら暗めの配色の浴衣だ。城内で軽く飲み食いしながら待ってくれていた。って言うかそりゃ気まずいよ、それに俺も男性陣なんだけどね……。そしてユズリハにちょくちょく邪魔され悪戯された。クラーチでの悪夢を思い出すよね、これ……。言っとくけど、昔の日本の伝統みたいなことはしてないぞ。ちゃんと下も穿いてるからな。でも上は勘弁してください。 そしてお祭りセット一式をフル装備で城下に出て来たんだが、浴衣を着ている人が結構いることにも驚いたけど、夜店とか屋台とかも西洋のものと同じくらい日本ぽいのが結構あるんだよ。なんだろなあー、この世界は和洋折衷みたいな感じなんだよなあ。屋台には焼きそばとかたこ焼き、りんご飴、お面とか射的(コルク銃ではなくおもちゃの弓だが)、千本つりみたいなくじ引き(これはまず当たらないからやらない方がいいとみんなには言っておいた)、まあ千里眼や鑑定で視えるしね。うん、でも何だか懐かしい気分になる。 浴衣を初めて着るイヴァやルティは子供の様にはしゃいでいた。アガシャも初めて着たらしいが、少し照れ臭そうだったので、「可愛いし似合ってるぞ」と







